信濃山形自転車倶楽部

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Legarsi Igname Web

24
2017  09:30:00

「疑惑のチャンピオン」再び

映画「疑惑のチャンピオン」 - The Program -のつづきとか、いろいろ。

■ルール・オブ・スピリット
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正直この映画を観るまでランス・アームストロングという選手は知りませんでした。信奉もありませんし、故に、落胆もありませんし。そもそも自転車競技自体に興味がありませんでしたので。

唯一知っていたのはフェラーリ先生。某放送局の「世界のニュース」のフェラーリ先生が逮捕されたF2の報道だったと思います。その報道で(フェラーリってクルマみたいな名前だな…)て思ったのでよく覚えています。世界のニュースでの報道は1回きりで、日本では報道されず話題にもならなかった様に思います。

『基準値内に納めている、だから不正ではない』 「疑惑のチャンピオン」@マッドなミケーレ・フェラーリ先生
『大切なのはルールでは無い、ルールの精神だ』「トップ・ランナー」@国際自転車競技連合 (UCI)の偉い人

本音と建前。矛と盾。まあそれが確執やら軋轢やらドラマやら悲劇を生む訳で。


■「疑惑のチャンピオン」を読み解くには
知らないからには知りたい&調べたい。文献やニュースは勿論、「シークレット・レース」「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」の告白本や自伝も読んでみました。そして「中畑監督がお薦めする素敵な自転車映画」等々のDVDを観たことでいろいろ見えてきた様な気がします。

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「ヤング・ゼネレーション」 - Breaking Away -
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・制作国:アメリカ、監督:ピーター・イェーツ(英国人)
・アメリカ映画協会が選んだ『感動の映画ベスト100』8位

「トップ・ランナー」 - The Flying Scotsman -
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・制作国:ドイツ,イギリス、監督:ダグラス・マッキノン(英国人)、劇場未公開
・トラックレースの自転車選手グレアム・オブリーの実話

「疑惑のチャンピオン」 - The Program -
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・制作国:イギリス,フランス、監督:スティーヴン・フリアーズ(英国人)
・自転車競技界から永久追放されたランス・アームストロングの実話

私なりに簡単に要約すると、
「ヤング・ゼネレーション」は欠点はあるけれどチートを良しとしない典型的なアメリカン・ヒーローの愛と正義の物語
「トップ・ランナー」は巨大な敵に虐げられてもなお闘い続けるスコットランド人の不撓不屈の物語
「疑惑のチャンピオン」はダークサイドに落ちたアメリカン・ヒーローの悲劇の物語

どの作品も英国人監督の目線によって作られているのがミソだったりします。


■スティーヴン・フリアーズ監督が伝えたかったこと
「疑惑のチャンピオン」で監督が伝えたかったことですが、暴露とか批判というよりは、人間観察や心理描写から生まれるシェークスピアの様な悲劇の物語を描きたかったのではないかと私は思っています。英国人であるが故に自然とそうなってしまったのかもしれませんが。

『環境や病気や組織に翻弄され、薬や嘘やお金に手を染め、堕落していく米国の英雄の物語。』

情報量多め、シニカル。英国人ならではの感覚でしょうか。演劇とか、歌劇とか、劇場で観ている様な気持ちになってしまいます。奇しくも上記の3作品は英国人監督の作品ですけど、その集大成というか集約された映画の様にも思えます。


■ランス・アームストロングという人について
私は、ランス・アームストロングは自転車における、映画「スターウォーズ」の"アナキン・スカイウォーカー"、ベイダー卿=ダース・ベイダーの立ち位置ではないか、と思っています。

”善良で純粋な心を持っていると同時に、奴隷という抑圧された境遇にあった為か、生存への欲求や上昇志向も並外れており、これが強大な力を渇望する心へと繋がっている。”

”戦略に対する柔軟性や、分け隔てない人間性など、有り余る才能や優しさを持つ一方で、その激しい感情に駆られやすく冷静な判断が取れないため、物事を性急に独力で解決しようとしたり傲慢に陥りやすく、ダース・シディアスの様な奸智に長けた者に騙されやすい要因になっている。そして愛しい者への思い入れも激しい。”


アナキンについて書かれている部分ですが、ランスと置き換えても十分通用する様にも思います。

本来は"ジェダイ"となるべき”フォース”を持っていたのにダークサイドへ落ちていく主人公。「いい大人なんだからそれは自己責任だよね」とも言えるのですが、後から考えれば取り巻く環境が”適切”であったなら悲劇は起こらなかったかもしれない訳で、それを考えると悲哀を感じてしまいます。


元はと言えば、医者や監督者が、山吹色のお菓子に目が眩み、不埒な悪行三昧だったからこの様な事態となったのであり、そこんとこどーなの?と突っ込みたいのですが、今回はこのくらいにしておきます。

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山吹色のお菓子、洒落の利いた真っ当なお菓子です。お正月に親戚に配ったら大好評でした。

結局のところ、ランス・アームストロングは自転車競技を統括する国際自転車競技連合 (UCI)に全てのタイトルの剥奪されてしまう訳で、(これってベニスの商人のバッドエンドじゃん…)と思わざるを得ず、やりきれない思いでいっぱいになってしまうのでした。


■ダークサイドに落ちたアメリカン・ヒーローは救われるのか?
「アメリカ人が嫌いなアメリカ人ランキング」で堂々の1位となったランス・アームストロングが「救いようの無いすっとこどっこい」であることは明白なのですが、スティーヴン・フリアーズ監督は映画の中で(本当はドープしなくても勝てたんじゃないの?)的なシーンを入れています。コンタドールに負けて3位になったシーン。表彰後「3位だってよ」と笑うベン・フォスターの演技に泣けてきます。

ダークサイドに落ちたアメリカン・ヒーローは救われるのか?

唯一の方法はルーク・スカイウォーカーよろしく、ランス・アームストロングの息子が自転車乗りとなり正々堂々とツール・ド・フランスを制すことではないか?と思っています。そうなればいいなぁと。それは今後のお楽しみということで。

『Truth is stranger than fiction.』 真実は小説よりも奇なり (英国詩人バイロン)


■相手選手のパンツを引っ張るな
15の春、田舎のサマーウォーズ的な高校に入学して、とあるインターハイ常連運動部に入った時に、先輩に訓示されたのがこの言葉でした。
「試合の時、相手からパンツを掴まれるが、絶対に相手のパンツを引っ張るな!」
「止まるな、常に動け!スピードで引き離せ!フォーメーションで道を切り開け!」
「あ~あと時間無いから2時間しか練習しないよ~だから効率良くやるよ~帰ったら勉強しろよ~」

イナーメ信濃山形の監督は勿論、選手達もそういった雰囲気があるので私は大好きなのですが、やっぱり健全でクリーンなチームや選手を観ていると気持ちがいい訳で、応援のし甲斐があるというもの。

そういった意味で、イナーメ信濃山形は注目&お薦めなチームなのです!(宣伝

よろしくお願いしまぁぁぁす!
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サマーウォースのキャッチフレーズ 「つながりこそが、ボクらの武器。」
”レガルスィ”=”つながる”だけにイナーメ信濃山形っぽい感じが


スティーヴン・フリアーズ監督って正直スゴイ監督さんだなと思います。「疑惑のチャンピオン」はレベルに応じていろいろな人が楽しめる良い映画だと思います。お薦めなのはイギリス人になりきって演劇を観る様にこの映画を楽しむこと。時折混じるジョークをシニカルに笑いながら英雄の悲哀に涙するのがいい感じのスタイルです。

「フライング・スコッツマン」vs「ブルー・トレイン」、「選手」vs「国際自転車競技連合」。その対比で観ていくと分かり易いかも。できれば字幕無しで。日本語字幕では”ブルートレイン”が”暴走列車”なっていますので。

上映された映画館は少なかったけれどよく頑張った素敵な映画だと思います。それを引っ張ってきた映画館さんは偉い!


■補足
フライング・スコッツマン
・イギリスのロンドンとエディンバラを結ぶ急行列車の愛称。
・転じてスコットランド人の自転車選手グレアム・オブリーのあだ名となる。
・機関車トーマスでは、40台生産された『クラスA1形』の唯一の現存機でゴードンの唯一生き残った兄弟。
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ブルートレイン
・青列車。北フランスのカレーあるいはパリと南フランスのコート・ダジュール地方を結んでいたヨーロッパを代表する豪華夜行列車。
・転じてランスの所属チームのUSポスタルの青色ジャージから付いた通称。
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by 管理忍


追記

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