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16
2016  21:30:00

映画「疑惑のチャンピオン」 - The Program -

■プロローグ

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“ガンを克服し、ツール・ド・フランスで7年連続総合優勝の偉業を達成したが、その後、長年にわたるドーピングが発覚し、自転車競技界から永久追放されたランス・アームストロングの栄光と転落の人生を、イギリスのサンデー・タイムズ記者デヴィッド・ウォルシュによるノンフィクションを原作に映画化。スティーヴン・フリアーズ監督。”wikiより



邦題「疑惑のチャンピオン」ですが、「汚れた英雄」を彷彿させる角川チックなネーミング。もう少しマシなネーミングは無いのか、とパンフを見たら"汚れた英雄"って書いてありました。オマージュですね、わかります。それは兎も角、題名の”疑惑”ですけど内容的には完全に”クロ”でした。いやはや。

某所でレビューされていたので気になりはじめ、超映画評論を見たら"今週のおすすめ"になっていたので(これは観に行かねばなるまいて!)と遠路遥々豊橋まで行ってきました。ほぼ下道で。往復半日以上。塩尻で観ておけばよかったと後悔。でも面白かったので良しとしておきましょう。


ここからネタバレ

■映画感想文

"努力で勝ち取ったチャンピオンが誘惑に負け、次々と悪事を重ね転落していく悲劇の物語"と思って期待していたのですが、徹頭徹尾"盗人の話"でした。しかも喜劇風味。監督容赦無し。

米国では英雄だった若者が欧州では自転車レースに勝てない為、他のみんなと同じ様にドーピングに手を染め、栄誉や金品を簒奪し、周りの人を巻き込み虐げながら王国を築き、最後にはフランス革命よろしくギロチンのように首を刎ねられ、全てを失う話。初めての人でもわかりやすい薬物投与プログラムのお話。監督親切丁寧。

主役のペン・フォスターは役に成りきる為、自ら薬物を試す役者魂を発揮。裏切り役のジェシー・プレモンスのユダっぷりがなんともまあ素敵過ぎ。フェラーリ先生もマッドな良い味出してました。

ドーピングそのものも問題ですが、そんなことよりも"①人為的に操作して他人を欺き"+"②栄誉や金品を奪う"ことが一番の問題かと。①は出場停止と厳重注意、①+②は永久追放と損害賠償、社会的な制裁も受けるでしょう。真っ当といえば至極真っ当なお話。

そして選手だけ悪者になるのもお約束。その辺りもビジネスにおける"ザ・プログラム”というところでしょうか。


監督さんはその辺、丁寧にわかりやすく描き込んでますし、テンポも演出も配役も良かったですし、とても良い映画だったと思います。それに選曲も含めていろんなところに、オマージュ、リスペクト、ウイット、ジョーク等々織り込まれています。

何の躊躇も無くドーピングしまくる時に「Mrs Robinson」が流れるんですが、背徳を題材とした曲ですし、ディマジオの件(くだり)は"本当の英雄はどこに行ったの?"ということなので(また監督は強烈な皮肉を)と思っていたましたが、後でダスティン・ホフマンが出てきた時は(このおっさん、十字架振り回して取り返す気満々でしょ)と監督の趣向に笑ってしまいました。



この監督さん、直球でバンバン投げてくるのでわかりやすいです。それに楽曲も要所要所でアシストしてくれます。オリンピックイヤーのタイムリーな題材ではありますが、塩キャラメル味のポップコーンとコーク片手に泥棒のドタバタ劇を見るみたいに気軽に楽しめる映画だと思います。

ランスと一緒に 「 I'm fly. 」と叫べば幸福感に包まれます。 So I'm fly! 笑っちゃうくらい楽しいです。

もう一度じっくり観たい+関連本を読みたい+DVDが欲しいので、私の評価は及第点の80点としておきます。


■なぜドーピングをしてはいけないのか

この問題、エンロン事件の構造と同じ様な気がします。粉飾決算はよくスポーツのドーピングに例えられることがあります。企業とそれを監視する会計士とがグルであることも良く似ています。

ドーピングしてはいけない理由は、"選手が不健康になるからではなく、不正行為により、自転車競技の信用が下がり資本(人・物・金)が逃げていくから"。身も蓋も無い話ですが。

ただ、この映画だけだと確かに分かりにくい部分もある、ドキュメンタリーではなく娯楽として作られている。尺的に、内容的に、心情的に、興行的にそうせざるを得なかったのかもしれません。

「シークレット・レース」「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」を読むと見えてくる部分もあるそうなので早速購入して読んでいる最中です。DVDも予約したのでじっくり探ってみたいと思っています。


by Hex

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